[ blog ] 大谷能生氏と対談しました。

先日の2/10,11の二日間、蓮沼執太フィル公演@TPAM・KAATのリハ~本番の合間、待ち時間も多かったので大谷能生氏に密着し、久しぶりにじっくりと話す機会に恵まれました。リハ後の横浜でお酒も深く入った中、話題はとても面白い展開になりまして。そこで氏との対談を録音しようと思いつき、本人の承諾を得てブログにアップします。

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話は共通の知人ミュージシャンや音楽業界の有象無象から、彼が活動を共にする菊地成孔氏とのラップユニットJAZZ DOMMUNISTERSについての話に及びました。そこでの能生の歯に衣着せぬ言及はラップシーンに収まらない、核心を突いた酒の席のグダ与太話となりました。

~以下 ビール、紹興酒、ワインからの会話より。

大谷:ラップに関してはね、ホントに皆がラーメン屋のように、うまいとかまずいとかしょっぱいとか、すぐ意見書くのよね。サックスとかトラックについては出来不出来とか完全無視なのに。

jmnc:特にその道に関して詳しくないのにも関わらず…

大谷:そうそう。偉そうに断言されたりすると、お前はじゃぁどれくらい知ってるんだ!? と思う訳。ちゃんと聴き比べとかアナライズとかしたことあんのかよって。

jmnc:(笑)それってさ、そういうこと言う人の観点て、日本語のラップなの?それともいわゆる本場のアメリカのラップなの?

大谷:多分ね、全部ごっちゃになってるの。

jmnc:(笑)ごっちゃになってるんだ。

大谷:うん。あるいは、どっちかしか知らない。なんかね、とにかく、自分が知ってる(音楽のジャンルの)中で、ラップに関しては一言言わしてもらいたい、みたいな人がリスナーにすごく多い気がする。ちょっとでも違和感とか理解不能感とか、逆にカッケーとか思って興奮すると(ブログとかSNSとかに)速攻書くのね。最近ね、ツイッターの使い方わかったんで、エゴサーチってやつですか? 自分の名前とか入れて検索するとそういうのがバンバン出てくるんで、面白くて(笑)。イライラしながらそういうの全部チェックしてんだよね。あのね、ネット上で「大谷能生」って発言してる人、みんなわたし読んでますからね。その投稿。

一同:(爆笑)

大谷:まあ、「JAZZ DOMMUNISTERSのラップはオールドスクール」とかさ、すごいシンプルヘッドに言われたりするわけ。。

jmnc:でもさ、そこに関して言えば、オールドスクール的な地点からまずは始まってるでしょ?

大谷:そうですね。やってます。だけどさ、こっちはやるにあたって、これまでのさまざまなラップのスタイルをきちんと辿ってさ、そこから自分に向いてるもの、あるいは今回やりたい状態ってものをチューニングしてあれになってるのよね。40過ぎてるからさ、ある程度自覚的に取り組まないと出来ないし。それができてないとか格好悪いって言われれば、しょうがないけど。テクニック的には、単に物真似なら出来るんだよ。オールドスクールだろうがニュースクールだろうが。でもさ、SIMILABとか参加して貰ってるんだから、彼らと違うことやろうとするのは当然でしょ? こういう姿勢が「リアルじゃない」ってことなんでしょうけど(笑)

jmnc:(笑)

大谷:批評も批判もさー、結局自分だけの基準で条件反射で、冷静に突き合わせながら聴くとかね、ツイッターだからしょうがないというのもあるけど、その場で書き飛ばしちゃってると、ゆっっーくり残ったダメージがあとで効いてくるよ。逆に心配しちゃうんだけど。

jmnc:なんかこう、神聖化している領域があって、ちょっとでもそこに触れると、その瞬間皆がちょっとイラっとして….。

大谷:「ラップやんの!?(苦笑)」とか「ラップ!?(ふざけんな)」みたいな、「ラップ」ってなんか、いまでもまだ一番みんなが食いつくワードなんだよなー。で、食いつくだけで、真面目には扱ってもらえないっていうね。

jmnc:ひとつの提案としてでさえも受け入れられないみたいな。

大谷:そうそう。

jmnc:そういうことを言う人たちが望んでいるベストなカタチって逆になんなの?

大谷:なんなんだろ。

jmnc:なんなんだろ。

大谷:分かんないんだよね

一同:(笑)

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大谷:あ、一つはね、アメリカのメジャーの完コピ。思ったのは、日本語ラップの場合だと、表面的には喉を「絞めた」発音と、「開けた」発音とでさ、それをやってるかどうかで「ホンモノ」かどうかって評価が分かれる。

jmnc:え~ そんな微妙なとこなの(笑)

大谷:いやいや。これ結構、重要で、「○×yeah~、▲□○~(喉を絞めたスタイルのラップを試しにやってみる)」とか、こういう発声でやると、「お、ちゃんとKRS-ONEとかコピーして、真面目にやってんな」とか思われるわけ(笑)

jmnc:えーまじで(笑)!?

大谷:そう。この話ってこのあいだ「ジャニ研!」でもやったんだけど、ジャニーズ・アイドルのラップって基本、喉を締めないで、母音を明朗に発音する時代が長かったわけ。ヒラ歌と変わらない喉でラップ部分もやるのね。それが嵐の櫻井くんくらいからマナーが変わってきて、こないだ辞めさせられた田中(聖)君だと完全に、いまの日本語ラップの主流の、締めて母音を濁らせた状態になってる。母音のサウンドがアメリカ英語の響きになってないと偽物扱いなのよ。もう、「日本語ロック論争」の時からなんにも変わってないんだけど、今回の俺みたいに普通に、普通に開けた喉の感じでやると、これはダサいって言われんのよ。自分だって発声に関してはすごい調整してやってんだけど、参考にしてんのが広沢虎造だったり、三波春夫だったり(笑)、あっちのサウンドの直接的な真似じゃないからね、意味不明なんだろうね。90年代にさ、それこそジブさん(ZEEBRA)とかブッダブランドとか、ランプアイとか、YOU THE ROCKとか、みんなでアメリカのサウンドに挑戦して、クリアしてきたって歴史がある。なんだけど、それ、もう基礎スキルだから。次があると思うんだよね。

jmnc:へ~でも、それ、能生は出来るか出来ないかで言ったら、出来るでしょ?

大谷:やってもしょうが無いって思てるからやらないだけなんですけどね。それだともっとかっこいい人いるし。だから、日本の皆さんがよく思う何が本物で何が本物じゃないか、という判断の際に、未だにそういった(喉がしまっていて、カッコつけている発音がいいんだ)テクニカルな問題が先に来ちゃうのか、と。出来るのは当然で、で、そっから先の選択が音楽的な勝負なんじゃないかなーと思うわけだけど、どーもね。発声、フレージング、シンコペーションその他を、詩の世界観とちゃんと結びつけるっていう作業の広さね。

jmnc:なるほど。そのキャパの広さがわかってくれないんだ。

大谷:そう。逆に「勉強不足」って言われるし。

jmnc:あー(笑)。俺ね、その話とリンクしてくると思うんだけど、例えばダフトパンクって、フランス人じゃなかったら、あそこまで騒がれなかったと思うんだよ。

大谷:そうだね(爆笑

jmnc:あそこまでファンキーなのはすごい良いし大好きなんだけど、そこにフランス人だからこそっていうのが、ファンクミュージックについて余計にリテラシーが高いと言われるところであって。

大谷:エキゾチズムのバイアスで、逆に評価が高くなるっていうね。

jmnc:でもJAZZ DOMMUNISTERSって(ダフトパンクと)同じアプローチでやってる訳だよね?受け入れてくれる人と、先に話した感じで拒否する人の割合でいうと前者の方が多いでしょ?

大谷:…..受け入れてる人も、あんまりそういういことには無関心みたい(笑)

 

————-というわけで、対談はこの後も続く訳ですが(吉田類風)、結論は僕も大谷能生も意外とリスナーの声を聞いている、ということでした。

大谷能生氏の最近の出演情報はこちら。岡村靖幸さんと湯山玲子さんとの、爆音でクラシックを聴き、トークするイベントだそうです。
http://shinsekai9.jp/2014/02/21/bakukura30/

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