※各位 お断り
以下の文章には高橋一生さんのお名前が幾度も登場しますが、決してご本人自身が関わる出来事を綴ったものではなく、ご本人の人格や名誉を毀損する意図のものではありません。くれぐれもあしからず。
「高橋一生さんに似てますよね」
とたまに言われることがあります。いや、「たまに」以上の頻度で初対面の人に言われます。
言われた方の僕の身としては、あんな超絶一流俳優さんに似てるなぞ、あまりに恐れ多すぎて、言われた時にはいつも手のひらを目の前で大きく横に振りながら「いえいえいえ」と腰を引きつつ後ずさり、そのまま全否定で逃げるのが精一杯。最近はその否定にも疲れてきて「僕の方が年上なのであちらの方が寄せてきてるんだと思います」など、ちょっとした開き直りジョークを交えてお茶を濁してその場をしのいだりするような、逆にいうとそんな頻度なのであります。
もちろん僕自身、似ているなど微塵の自覚もありません。おこがましい。
然し、ほら、顔って、何となくカテゴリってありますよね。地政学的なものなのか、はたまた育ってきた環境なのか。今回のお話に至っては当然ながら顔そのものは比較して程遠く、雲泥の差を超えてF1ドライバーとシャインマスカット泥棒くらいの差が事実あるわけです。
が、
そう、たしかに「同じフォルダだな」とは思うのです。
ここ、誤解しないで頂きたい。高橋一生さんが農園からブドウ一房くらいちぎって走って逃げたっていいじゃないか、という話ではありません。日本人の顔、ザックリと何種類かのカテゴリに分けるならば、僕は同じフォルダに格納されるんだろうな、という話です。
そんな折の先日、このコロナ渦も(ここ日本では)軟着陸しつつある晩夏にトロンボーンアーティストNAPPI率いるバンドHainuwellが福生のとある屋外イベントに呼ばれまして、久々のお客さんの前でのライブでドラムを叩く機会を頂きました。
会場は福生のジャパマハウス、そうここはかの大瀧詠一大提督やあの清志郎大統領が住んでいたとされる、名物米軍ハウス。その庭先にステージ、福生ならではのヘブン感満載のイベントです。なんて素敵なイベントだ。ありがとうナッピ
ライブはもちろん楽しく無事済みました(割愛)
終演後、最高にチルな会場でブラついていたところ、なんだかこちらをチラチラ見て僕のことを明らかに指差している親子らしきお母さんと小学生の女の子が遠目の視界に入ってきます。
うーむなんだろう、なんか、ドラム良かったですぅ、みたいな、そんなアレかな ははぁあん
すると違うアングルから、
「うちの娘が高橋一生の大ファンなんですが、高橋一生がドラム叩いてるっていうので一緒に写真撮ってもいいですか?」
僕の傍にいた彼女らのお父さんであろう方にこう話しかけられると、お二人がこちらに駆け寄って来るではないですか。
え
今聞こえたことが一瞬耳に入って来ませんでした
意味が飲み込めない
当たり前ですがそのお父さんも僕が高橋一生本人だとは思ってない訳で
僕の心境をどう形容すれば良いのだろうか
嬉しい 哀しい 寂しい 楽しい 情けない 美味しい
全ての感情が一挙にやって来る
もう僕は何者でもなく、芸能人に似ているだけのただの偶像、しかもドラム叩いちゃってるからなんか印象強くなっちゃってるただの似てる人
この複雑な心境、いわば「アイムナッシングbutサムシング」感、なかなか皆さんと共有し難いと思います。しかもその小学生の女の子、もう何かのモードに入っちゃってるっぽい顔でずっと僕を見ていて、その表情は高橋一生さんがドラムを叩いているのか、ドラムを叩いている人がたまたま高橋一生さんに似ているどうでもいい誰かなのか、もはや関係のない感じの域に達しており、違う、君の目に映っている人はここにいない、という事実をどう伝えようと思案しましたが、逆にこの娘の夢を壊してはいけない、そうだ、俺は究極の人助けをしてるんだ、怯むな、と自分に言い聞かせながら撮影に臨ませていただきました。おそらく今までで一番似てない顔つきだったと思います。
一人の少女を救ったにも関わらず、自分の人生の1ページに全く書く気が起こらないこの出来事が、みなさんにとって良い思い出となればと思います。
折しも本日ご本人の出演作が話題になっております。ご活躍をお祈りしております。